ページ
漫画を冊子のような媒体で読むという前提で、一つのお話は複数のページで構成されることになります。印刷工程の都合上、一話を構成するページ数は4や8の倍数であることが多いようですが、電子出版においてはそのような制約はなくなるのかもしれません。冊子の形状から、2ページ分の情報を見開いた状態で読み手に露出することになりますので、ページをまたいだ大きなコマワリによって、インパクトの大きい画面作りをすることもあります。ただし、多くの電子書籍端末はせいぜいB5版程度の液晶サイズであるため、漫画雑誌の大きさで読もうとするとどうしても1ページずつ閲覧することになり、ページをまたいだ絵が半分に分割された状態で読まれてしまうこともあります。構図によってはちょうど分割された中央部分に主題が置かれるため、計算したインパクトを伝えきれない可能性があります。(将来的には端末側の進化でこの問題は解消されるかもしれません。)
見開きページは例外として、漫画がページという単位を持っていることでいくつかの慣行が生まれています。まずは、作画のギャランティ、すなわち原稿料の計算にはよく「ページ数×ページ単価」という式が使われるようです。このページ単価の大きさが漫画家としてのステータスとしても機能しているようですが、有名な漫画家さんでもたくさん描きたい人はあえてページ単価を抑えて、掲載枠を有利に勝ち取ろうとすることはあるようです。
次に、ページという物理的な制限によって、ストーリーの続きを読むために「ページをめくる」という動作が読者側に発生します。この身体的なコストがあるため、つまらなそうな漫画はページをめくってすらもらえず、冊子を閉じられたり、他のページに飛ばれたりするそうです。そのため、ページをめくってもらうインセンティブを作る技術が発達しました。例えば、ページの終わりから次のページの頭にかけてストーリー上の大きな起伏を挟んで読者の気をひくような構成(ヒキ)にして、次のページへの興味を高める手法は多く使われているようです。テレビ番組でコマーシャルをまたぐときにも同じように視聴者の意識を番組から切らせないようなアイディアをよくみかけます。手法があまり露骨過ぎると反対に読者の気を滅入らせてしまいかねませんし、いつも同じようなヒキを作っていると飽きられてしまうこともあります。
最後にページというパッケージがあることで、読者に一定のリズムを与えるという効果があるようです。楽譜でいうところの小節のようなものでしょうか。「一話」という区切りの中でストーリーの大きな起承転結が展開されるように、「一ページ」の中でも小さな起承転結の波を作ると非常に読みやすい漫画になるそうです。面白い漫画は、その微細構造の中にも起伏を多く詰め込んでいるそうですが、ページという単位が小さい起伏へも焦点を当てやすくする助けとなっているのでしょう。
ページそのものは一枚の紙にすぎず、商業誌ではB4、同人誌ではA4サイズの紙が使われることが多いようです。デジタル原稿の場合、紙のサイズはそれほど重要ではなく、印刷時の目の細かさが品質に関係します。コンピューター上では縦横のある1枚の白い平面という扱いになると思います。この平面上に載っていく他の構成要素が漫画の主たる成分になるので、それら(主にコマ)の位置を決める座標平面の役割を果たします。