漫画とコンピューター

漫画の分析

漫画を分析するにあたって、対象である「漫画」そのものについて考えてみます。

まず、漫画と一口に言ってもその表現手法は様々に存在するので、ある程度扱う範囲を絞り込もうと思います。漫画がどのように発生してきて、現在どのような形で普及していて、今後はどんな在り方をするのかを想像してみます。

日本国内においては、よく鳥獣戯画を最古の漫画のスタイルとして挙げられます。これはウサギやカエルを擬人化し、当時の世相を描きつづったものです。絵巻物という体裁をとっていて、巻物をスクロールして読み進めていくお話が展開していくことになります。
江戸時代には葛飾北斎の描いたスケッチが好評を博していたそうです。日本の風俗が漫然と描写されたこの絵は、陶磁器とともに海外に渡って、印象派の画家に大きな影響を与えたそうです。この頃には絵師の原画を元に版木を作成して、木版画として印刷する工程が確立していて、庶民でも楽しめるものになっていたそうです。
幕末期以降は海外のカリカチュア、コミック、カートゥーンの文化が国内に流入し、漫画家のはしりのような職業が生まれていったようです。それから徐々にコマワリやフキダシといった表現手法が確立していき、現代の漫画に近づいてきました。
漫画が大衆に広まっていく過程には紙芝居、貸本、漫画誌といった流れがあったようです。現代では絵を電子データ化した電子出版という新しい頒布形態が芽吹きつつあります。既存の漫画のコマワリを携帯電話向けに再編集したり、音声やアニメーションをつけて映像メディアに近づけていくというアプローチもあるようです。

どこからどこまでが漫画であるかと決めることはできませんが、ここでは分析の対象としていくらかの制限を設けることにします。一つ目は、冊子のようなページをめくって読み進めること、二つ目はアニメーションのような動画ではなく静止画であること、三つ目は台詞は音声ではなく活字で提供されることです。自分のペースで読め、自分の想像力で行間を補って、作品を自分の中に展開できることが漫画の魅力だと思うのです。これだと小説のような活字作品も当てはまってしまいかねないので、四つ目に絵と活字を主体としたものであることを加えましょう。そして、絵本とも区別するために必要に応じてページ内にコマワリを設けて複数のコマでページ内に起伏を設けることができるものとしましょう(五つ目)。漫画の制作作業のデジタル化によって、カラー原稿の作業も省力化が進みましたが、印刷コストや電子ペーパーの現状を考えると出版物全体ではまだまだモノクロ原稿が占める割合が多いと思います。ここではカラー原稿とモノクロ原稿を別物と考え、主にモノクロ原稿について考えていこうと思います(六つ目)。